年に1度の社会保険料の見直し「定時決定」

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「給与は毎月変化があるのに、社会保険料は毎月決まった額を納めているのはなんでだろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか?

今回は、毎月変化がある給与と毎月固定の社会保険料に関わりのある、『定時決定(ていじけってい)』についてご紹介します。

定時決定=年に1度の社会保険料の見直し

社会保険とは「健康保険」と「厚生年金」のことで、社会保険に加入するときは、月給の見込み額から「標準報酬月額」と「等級」をだして、実際の社会保険料を決めています。

 
社会保険料の決め方「標準報酬月額」と「等級」についてはこちら
https://www.i-oshigoto.co.jp/law/syakaihoken/235

 

そのため、社会保険加入時に出した月給の見込み額と実際に働いて得た額に大きな差がなければ変更はありません。
しかし、繁忙期で残業が多くなったり、引っ越して交通費が変更になったり、昇給して基本給が変わったりすると、月給の見込み額と実際の金額を比べて少なかったり多かったりと、差が発生することがあります。
収入に応じて社会保険料は決まりますが、毎月変動するたびに、標準報酬月額を変更して社会保険料を変更するのは合理的ではありません。

 

そのため、1年に1回標準報酬月額を見直して実態に合った社会保険料に計算し直すことを『定時決定』や『算定』といいます。

定時決定のやり方は?

※7月1日時点で社会保険に加入している人が対象。

【1】4月~6月の3ヶ月間で支払いをされた報酬月額(基本給、通勤手当、残業代など)の平均額を計算し、「標準報酬月額」と「等級」を決定します。
 
【2】当初決まっていた等級と【1】で出した等級に差がある場合、変動があったとみなされ【1】で出した新しい等級で標準報酬月額(社会保険料)が決まります。
※差がない場合は、変更ありません。
 
【3】9月~翌年8月までは、新しい標準報酬月額に基づいて、社会保険料が徴収されます。


表に照らし合わせると、標準報酬月額は180,000円なので、
9月から健康保険料・厚生年金ともに上がることになります。

つまり、4月~6月の算定期間に残業が多かったりすると保険料があがり、逆に欠勤などで給与が少なかった場合には保険料が下がるというわけです。

ただし、例外があります

4月~6月の間、出勤日数が月17日未満だった月は除いて平均額を求めます。

 

例えば、3月の出勤日数は20日だったが、4月と5月は16日しか出勤していなかったという場合は、3月分の給与額だけで標準報酬月額が決定されます。
そのため、期間中の出勤日数がいずれも17日未満だった場合や、病気等による欠勤や育児休業などにより出勤しておらず、給与の支払いを全く受けない場合も、標準報酬月額の変更はなく、従前のままとなります。

 

ところで社会保険の加入要件は、週30時間以上就業する人ですから、

1日8時間 × 週4日勤務 = 週32時間勤務

という人もいます。

週4日勤務だとそもそも月17日以上の稼働日がないこともありますよね。このように正規の社員よりも短い時間で働いているという場合は、15日か16日出勤した月を算定対象とする特別ルールが適用されます。

もう一つの特別ルール

仕事の内容によっては、毎年この算定時期が繁忙期で残業が多い、という人もいると思います。

 

こんな人は、残業が多かった月の給与を基準にされますから、残業が少ない月にも高い保険料を納めることになるわけなので、なんだか不公平ですよね・・・

そこで、年間報酬(賞与は除く)の平均で算定することの申し立てというものがあります。

 

明らかに4,5,6月に支払われる給与額が他の月に比べて多いことを記載した書類を提出します。それが認められれば、4~6月の通常の算定の時期ではなく、1年間の平均額によって標準報酬月額が決定されます。

 

ただし、「前年7月~本年6月の平均額」と「本年4月~6月の平均額」から導かれる標準報酬月額とに2等級以上の差が生じていることが申し立ての要件となります。

アビリティーセンターで「社会保険」や「法務」に携わる経験を活かし、働く人には知っていてほしい話をわかりやすくお伝えしていきます。