労働基準法の基礎知識『有給休暇』について
目次
・『休暇』と『休日』の違いは?
・『有給休暇』と『特別休暇』って何が違うの?
・有給休暇はいつ、何日もらえるの?
・有給休暇が付与されないケースは?
・有給休暇はいつでも自由に取得できるの?
・有給休暇を半日分ずつ取得することはできるの?
・半日休暇を取得した日に残業はできるか?
・有給休暇中の賃金はどのように計算されるか?
・途中で就業条件(所定労働日数)が変更になった場合は有給休暇の付与日数に影響はあるの?
・有給休暇の義務化って何?
『休暇』と『休日』の違いは?
『休暇』と『休日』を区別なく使っているという方が多いのではないでしょうか?
法律では、『休暇』と『休日』は次のように定義されています。
『休暇』とは労働をすることを免除された日を言い、『休日』とはそもそも労働する必要のない日となります。
ですので、有給休暇とは『給料が発生する、労働が免除された日』ということになります。
有給休暇は、労働基準法第39条に定められており、労働者に権利として発生します。
『有給休暇』と『特別休暇』って何が違うの?
結婚休暇や忌引き休暇などが「特別休暇」として定められている会社があります。
この特別休暇が有給休暇と異なる点は「法律で給与が補償されている休暇」ではないという点です。
「休暇は認めるが、給与は支払わないよ」という場合でも問題ありません。
欠勤扱いにはならないので、ボーナスの計算をしたりする際に出勤扱いで計算してもらえます。
特別休暇については、会社によって「有給」か「無給」かを就業規則に明記されているので、確認してみてください。
有給休暇はいつ、何日もらえるの?
パート勤務で週2日の勤務の方や短時間勤務の方は有給休暇がもらえないと思っている方はいませんか?
週1日勤務でも1日2時間の方でも有給休暇はあります。
所定労働日数に対して与えられる有給休暇の日数が法律で決められています。
※所定労働日数とは労働契約等にあらかじめ定められている労働日数のことです。
上の表を見ていただくと、有給休暇が何日付与されるかは「週に何日(年間に何日)働くか」で決まります。
週1日勤務の方でも6ヵ月後に1日付与されることが上の表で分かると思います。
では、Aさん(2021年5月1日入社 週3日勤務)の方について解説します。
有給休暇が付与されるのは入社して6ヵ月が経過した日となりますので、2021年11月1日に有給休暇が付与されます。
2021年11月1日以降に有給休暇を使って休む権利が発生するということになります。
では何日付与されるのでしょうか?
上の表を見てみると週3日勤務の場合は『5日』となります。
最初に有給が付与されるのは入社から6ヵ月後ですが、その後は1年ごとに付与されます。
Aさんの場合は、2回目は2022年11月1日に6日付与されることになります。
前回、付与された日数が2日残っていたとすれば「8日間」有給休暇があるということになります。
但し、有給休暇にも有効期限があります。
付与されてから2年間使わなければ、消滅してしまいます。
2021年11月1日に付与された有給休暇は2023年10月31日に消滅するということです。
アビリティーセンターでは有給休暇の残日数が給与明細に明記されておりますので、ご確認ください。
有給休暇が付与されないケースは?
週1日の勤務でも1日2時間でも6ヵ月就業すると法律に則って有給休暇が付与されます。
ただ、有給休暇が付与されるためには条件があります。
それが、『所定労働日の80%以上の出勤率』です。
出勤率が80%未満だと有給休暇の日数が減るのではなく「0日」になります。
有給休暇はいつでも自由に取得できるの?
原則として、労働者は希望する日に有給休暇を取得できます。
しかし、繁忙期に同じ部署で多くの人が同時に休むと業務に支障をきたします。
そのため、会社には「時期変更権」といって有給休暇をとる時期を労働者に変更してもらう権利を持っています。
また、労使協定により有給休暇を取る日を事前に決めてしまう「計画的付与制度」というものがあります。
有給休暇のうち5日間は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておかなければいけません。
しかし、5日を超えた分が計画的付与制度の対象となります。
例えば、付与日数が10日ある労働者は5日間は会社が指定した日に有給休暇を取得して休ませることができるということになります。
計画付与日より以前に有給休暇を全部使ってしまったという人がいたら、会社はその人を計画的付与日に休ませるにあたり休業手当を支払わなければなりません。
これは労働基準法第26条に「会社の都合によって労働者を休ませる場合、平均賃金の60%以上を支払わなければならない」と定められているからです。
アビリティーセンターには、計画的付与制度はありません。
お伝えした通り、有給休暇とは『給料が発生する、労働が免除された日』ということになります。
そのため、会社の休日に有給休暇を取得することはできません。
例えば、月・水・金が所定労働日の場合、火曜日や木曜日に有給休暇を取得することはできないことになります。
有給休暇を半日分ずつ取得することはできるの?
半日有給休暇や半休というのを聞かれたことがあると思います。
労働基準法では1日単位で有給休暇を与えることと定められていますので、「半日有給休暇」についての記載はありません。
半日単位で有給休暇の取得を認めるかどうかは、会社の規程によります。
半日有給休暇が運用されている場合、就業規則等に定められています。
また、「半日」の区分方法については、主に2つあります。
①1日の所定労働時間の2分の1とする方法
②午前と午後に区切って2分割する方法
アビリティーセンターでも半日有休が可能です。また、①を採用しています。
半日有給休暇を取得した日に残業はできるか?
残業することは可能です。
実労働時間が8時間を超えなければ、時間内単価でお支払いいたします。
実労働時間が8時間を超えた場合に割増賃金をお支払いいたします。
この実労働時間は実際に働いた時間ということになりますので、半日有給休暇を取得した時間は含めません。
有給休暇中の賃金はどのように計算されるか?
3つの計算方法があり、どれを選択するかは会社によって違います。
【1】 通常の賃金
労働者が通常の契約で定められた就業時間労働したと仮定した場合の1日当たりの賃金
【2】 平均賃金
過去3ヵ月間に支払った賃金を合計し、それを歴日数で割って算出した賃金
【3】 標準報酬日額
健康保険や厚生年金の基準となる「標準報酬日額」により算出される賃金
アビリティーセンターでは、【1】で算出した賃金をお支払いしています。
途中で就業条件(所定労働日数)が変更になった場合は有給休暇の付与日数に影響はあるのか?
※所定労働日数とは労働契約等にあらかじめ定められている労働日数のことです。
Aさん(2021年5月1日入社 週3日勤務)の場合、有給休暇が付与されるのは6ヵ月後の2021年11月1日となります。
有給休暇が付与される2021年11月1日の所定労働日数が週3日のままであれば、有給休暇は5日付与されます。
しかし、2021年9月から週4日に就業条件が変更になっていれば、有給休暇は7日付与されるということになります。
有給休暇が付与される日の所定労働日数により付与される日数が決まるということです。
有給休暇の義務化って何?
有給休暇は原則、労働者が会社に請求して取得することになっています。
しかし、日本では有給休暇の取得率は低い状態が続いているのが現状です。
そこで2018年に成立したのが「働き方改革関連法案」です。
その結果、2019年4月1日から『10日以上の有給休暇が付与される全ての労働者に対し会社が有給休暇を付与した日から1年以内に5日間有給休暇を取得させること』が会社に義務付けられました。
具体的には、Bさん(2021年7月1日入社 週5日勤務)の場合、有給休暇が付与されるのは6ヵ月後の2022年1月1日となります。
週5日勤務ですので付与日数は10日となります。
そのため、付与日から1年以内の間に5日間の有給休暇を取得させる義務が会社側に発生します。
2022年1月1日から2022年12月31日までの間に5日取得させる義務が発生するということになります。
会社によっては入社日に有給休暇を付与する会社もあります。
そのような場合は、付与した日を基準に1年以内に5日取得させなければいけません。
Bさん(2021年7月1日入社 週5日勤務)の場合、2021年7月1日に10日付与されますので、2022年6月30日までに5日取得させる義務が発生するということになります。
労働者が自分の意思で5日以上の有給休暇を取得している場合は、会社側はさらに5日の有給休暇を取得させる義務はありません。
但し、取得した日数が5日に満たない場合は残りの日数は会社が取得時季を指定して有給休暇を取得させなければなりません。
つまり、労働者自ら有給休暇の取得、会社による時季指定、計画付与のいずれかの方法で労働者が5日取得した時点で会社は義務を負いません。
※時季指定:会社側が労働者の意見(いつ有給休暇を取得したいか?)を聴取した上で、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう聴取した意見を尊重し、有給休暇を取得する日を決めること