労働基準法の基礎知識『休業手当』について
賃金支払いの原則『ノーワーク・ノーペイ』
労働基準法第24条に企業は労働者に対して賃金を支払い際のルールを定めています。まずは賃金支払いの原則からみていきたいと思います
賃金支払いの原則には
『賃金は、①通貨で、②直接労働者に、③その全額を ④毎月1回以上、一定期日に支払わなければならない』
とされています。
企業は労働の対価として労働者に賃金を支払います。そのため、労働者の何らかの理由により労働しなかった場合は企業には賃金の支払い義務が発生しないということです。
ノーワーク・ノーペイが適用される場合
労働者の何らかの理由により労働しなかった(労働の提供が行われなかった場合)に適用されることになります。
例えば、遅刻や欠勤、早退などです。これらの場合は、労働できなかった原因が労働者にあるため適用されます。
他には、天災などの不可抗力による休業の場合で「労働者にも企業にも責任がない」場合には企業は賃金の支払い義務は発生しません。
ノーワーク・ノーペイが適用されないケース
企業に責任があり、休業となった場合はノーワーク・ノーペイが適用されず、企業は労働者に対して賃金を支払わなければいけません。
具体的にどのような場合か、みていきたいと思います。
- ■企業側の故意・過失による休業
- ■経営不振による休業
- ■資材などの材料の入荷遅れや不足による休業
- ■設備や工場の機械に不備や欠陥があり休業
- ■設備や機械の検査が必要となった場合の休業
- ■作業に必要な従業員が足りないため休業
休業手当
ノーワーク・ノーペイが適用されない場合、いわゆる企業側の都合により労働者を休ませた場合は一定の額を労働者に支払う必要があります。
これを定めているのが、労働基準法第26条です。
休業手当の対象者
雇用形態に関係なく全ての従業員が対象です。
休業手当の支給額の計算方法
休業手当について明記されている労働基準法第26条には支給額について「平均賃金の60%以上」とされています。
平均賃金とは直近3ヵ月の賃金総額を総暦日数で割りだした1日当たりの金額となります。
※賃金の総額とは残業代や通勤手当などが含まれた税金等を控除する前の総支給額のことです。
但し、日給、時給、出来高給で支給されている場合は最低保証額として以下の計算式で行ないます。
平均賃金と最低保証額を比較して高い方が平均賃金となります。
支給額は平均賃金×休業の対象となった日数分となります。
企業の責任により、労働者を早退させた場合の休業手当の支払い
就業し早退させた日の賃金額が平均賃金の60%を下回る場合は、休業手当としてその差額の支払いが必要となります。
休業補償
休業手当とよく似た言葉で「休業補償」があります。よく似た言葉ですが、全く別物ですので、区別して覚える必要があります。
休業補償については労働基準法第76条に
労働者が業務上のケガや病気の療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合において使用者は労働者の療養中、平均賃金の100分の60の休業補償を行なわなければならない。
と定められています。
業務上や通勤中もしくはそれらが原因となって発生したケガや病気を「労働災害(労災)」といいます。
労働災害には「業務災害」と「通勤災害」の2通りがあります。
業務中や会社内など事業主の支配下にある状態でケガや病気や死亡してしまう業務災害と、通勤中に事故に遭い、ケガや障がい、死亡する通勤災害があります。
いつから給付されるの?
休業の初日から3日目までは業務災害の場合、使用者から休業補償(1日につき平均賃金の60%)が払われます。
4日目からは業務災害、通勤災害ともに労災保険より休業補償が払われます。
休業補償の支給額の計算方法
労災事故直前3ヵ月分の賃金を歴日数で割ったもの(平均賃金)で算出されます。算出された額を「給付基礎日額」と呼びます。
労災保険から給付されるものは休業補償だけではない
労災が起こり、労働者が休業せざるをえなくなった場合には4日目からは労災保険から休業補償が給付されます。給付額は休業補償に上乗せして「休業特別支給金」も支給されます。休業特別支給金の支給額は休業1日につき給付基礎日額の20%相当額となります。
(休業補償は厳密には、業務災害の場合は「休業補償給付」、通勤災害の場合は「休業給付」と使い分けられています。)
いつまで休業補償はもらえるの?
<休業補償を受け取るための条件>
- ■仕事に従事できない状態であること
- ■労災によりケガや病気の療養による休業であること
- ■会社から賃金を受け取っていないこと
を満たしていれば、条件を満たして休業している限り給付は続きます。
【Q】休業補償を受給中に有給休暇を使ったらどうなるでしょうか?
【A】有給休暇を使った場合には休業補償は受けられません。
休業補償を受け取るための条件として「会社から賃金を受け取っていないこと」となっているためです。
通勤災害の場合、3日目までは休業補償が受けられないため、その期間に有給を充てることが可能です