正社員やフルタイムの人だけのものじゃない!労働基準法の基礎知識・有給休暇

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仕事を休んでもその日のお給料がもらえるので「給与が有る休暇」という意味で「有給休暇(=有休)」です。

これは労働基準法第39条に定められた労働者の権利です。

 

会社によっては就業規則に「特別休暇」として結婚休暇、忌引き休暇などを定めていますが、こちらは会社に給与の支払いが義務づけられているわけではありません。

「休暇は認めるけど給与は支払わないよ」ということでも問題ありません。

 

この場合、給与は支払わないけど「所定労働日に休むことを認める」ということは「欠勤」扱いにはしないという意味です。

例えばボーナスの計算をしたりする際に「特別休暇で休んだ分は出勤扱いで計算するので不利になりませんよ」というようなことです。

 

労働者の都合で休むことに関して、法律で給与が補償されているのは「有給休暇」だけなのです。

 

ちなみに「産前産後休暇」や「育児休業」についても会社は給与を支払ってもいいし、支払わなくてもいい、どちらでもいいのです。

ただし、就業規則には「有給」か「無給」かが明記されているので確認してみて下さい。

 

 

では有給休暇について詳しくみてみましょう。

「私はパート勤務で週2日だから有給休暇はないの。」という人がいますが、そんなことはありません。

週1日勤務でも1日2時間の人にも有給休暇はあります。

下表は所定労働日に対して与えられる有給休暇の日数です。

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有給休暇は「週に何日(年間に何日)働くか」が基準です。

ですから短時間勤務の人にも権利があります。

 

 

では、Aさん 2013年8月1日入社、週3日勤務の契約 について解説します。

入社して6ケ月が経過した、2014年2月1日に「5日間の権利」が発生します。

2月に全部を使ってもいいですし、ずーっと持っていても構いませんが、有効期間は2年間ですから、2016年1月31日までに使わないと消滅してしまいます。

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最初は6ケ月後ですが、その後は1年ごとのカウントになります。

2回目は、2015年2月1日に「6日間」が発生します。もし、その時点で最初の2日分が残っていたとすれば「8日間」の有給休暇がある、ということになります。

 

 

どんな状況でも、入社半年後に権利が発生するのか?

そうではありません。

「所定労働日の80%以上の出勤率」であることが条件です。

出勤率が80%未満だと有給休暇の数が減るのではなく、「0」になります。

もし週5日勤務の人の出勤率が79%だとしたら、

月22日×6ケ月=132日×79%=104日÷6ケ月=月17日

しか出勤していないことになるので、平均して毎週1日は欠勤していることになります。

よほどの事情がないとそんなに休む人はいないので、たいていの人には有給休暇の権利が発生します。

 

 

いつでも自由に有給休暇がとれるか?

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会社側には「時期変更権」といって、有給休暇をとる時期を労働者に変更してもらう権利があります。

例えば繁忙期に同じ部署で多くの人が同時に休むといった場合、業務に支障をきたしますので、休む時季を変更させるということです。

 

また、会社が有給休暇を取る日を事前に決めてしまう「計画的付与制度」というものがあります。

有給休暇のうち5日を超える部分がその対象となります。

例えば、有給休暇が10日の労働者は5日まで、20日の労働者は15日まで、会社が指定した日に計画的に休ませることができます。

GWや年末年始、地方祭などにあわせて、社員全員または部署単位で有給休暇を強制的にとらせるのです。

ここで5日を超える部分が可能となっていますが、入社から半年の人には10日しか有給休暇がないわけですから、実際には年間で5日以上の計画付与はあまりないでしょう。

 

しかし、計画付与日より以前に有給休暇を全部使ってしまったという人がもしいたら、会社はその人を休ませるにあたって「休業手当」を支払わなければなりません。

 労働基準法第26条で、「会社の都合によって労働者を休ませる場合、平均賃金の60%以上を支払わなければならない」と定められています。

 

 

有給休暇がとれる日は所定労働日であることが前提です。

当たりですが、会社がもともと休日(日曜や祝日など)の日に有給休暇をとることはできません。

ですから、計画付与で社員一斉に有給休暇を取らせる日は「出勤日」なのです。

(※月・火・水曜日が所定労働日の場合、木曜や金曜に有給休暇をとることはできません。)

 

その日に「出勤しなくてもいい=会社の都合で休ませる」のなら、会社は「休業手当」を支払わなければならないというわけです。

ですから有給休暇の残日数をみて会社から「期末までに計画付与日が3日間ありますからその分は残しておいて下さい!」と言われたりします。

会社としては「欠勤」で無給か、休業手当を支払うかは大きな違いですから。

  

 

有給休暇をとった場合に支払われる金額

3つの計算方法があり、どれを選択するかは会社によって違います。

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多くの会社は【1】だと思います。

 

【2】の場合、過去3ケ月間の賃金総額には「残業代」や「住宅手当」なども含まれますので、【1】より多くなる場合があります。(最低補償は通常の60%)

 

【3】の場合、年の途中で給与が上がったとしてもすぐには反映されないので、【1】より少ない場合も有り、またその逆も有り得ます。
(就業規則等に明記されていますので確認してみて下さい。)

 

ですから、【2】 や【3】の場合は「時給1000円×7時間勤務=有給7000円/日」ではなく、4200円だったり6000円だったりしても違法ではありません。

 

 

 

最後になりますが、有給休暇は付与される日が基準となりますので・・・

Aさんの場合

2013年8月1日入社、週3日勤務の契約で就業開始、 2014年2月1日最初の5日が付与されます。

2015年2月1日に2回目が付与されますが、2月1日から契約が「週4日」に増えた場合は6日でなく「8日」が付与されます。

2016年2月1日に3回目がきますが、この時点で「週2日」の契約になった場合は「4日」が付与される・・・ということです。

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こんなに毎回、契約内容(所定労働日)が変わることはないとしても「出勤率が80%以上かどうかをみる期間」と有給休暇を「付与する日=所定労働日数」とが異なるとこのようなことが起こります。

ちなみにAさんの就業日の変更(増減)が4月1日からだと、付与日(2月1日)が基準となりますから1年後の次の付与日まで有給休暇の日数の増減はありません。

 

 

「正社員やフルタイムの人にしか有給休暇はない」なんて勘違いしている人がいたら是非、教えてあげてください。

アビリティーセンターで「社会保険」や「法務」に携わる経験を活かし、働く人には知っていてほしい話をわかりやすくお伝えしていきます。