労災保険ってどんなもの?【1】労災保険と「業務災害」

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みなさんは、労災保険・労災事故についてどのくらいご存知でしょうか。

おそらく被災経験のある人は少ないと思います。

病院へ労災の書類を提出したり、労働基準監督署からお金が振り込まれたりしたことがある人は少ないでしょう。勿論そのほうがいいんですけどね。

 

健康保険と厚生年金のことを「社会保険」といい、雇用保険と労災保険は「労働保険」といいます。

健康保険と年金は「国民皆保険」といって必ず加入しなければならないものです。

ですが、雇用保険(管轄:公共職業安定所)と労災保険(管轄:労働基準監督署)は、給与をもらって働く人にもしものことがあった時のための保険です。

ですから、給与を支払う側である「事業主」は雇用保険や労災保険(一部例外あり)には加入できないのです。

 

労災保険は、パート、アルバイト、出向社員、派遣社員、外国人などすべての労働者に適用されます。

また、他の保険には働く時間など加入要件となるものがありますが、労災保険にはありません。たった1日だけのアルバイトであっても労災の対象となります。

 

労災保険の特徴としては、保険料は事業主のみが負担し、労働者の負担はありません。

保険料率は業種によって違います。

例えば金属鉱業は8.8%、造船業2.3%、銀行0.25%というように仕事の危険度が高い仕事ほど保険料が高くなるわけです。

保険料は、労働者1名につき毎月〇円ではなく、1年間に支払った賃金総額×料率 を事業主が支払うということになります。

 

事故防止に取り組み、労災事故がない会社に対しては労災保険料が安くなる「メリット制」というものがあります。

逆に死亡事故を起こしたり事故の発生回数が多い会社に対しては保険料が高くなるというルールがあります。自動車保険みたいですね。

 

労災には「業務災害」と「通勤災害」があります。

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「業務災害」とは勤務時間中に仕事をしていて負傷(疾病)することです。

ですからお昼休み(業務から開放されているため)の怪我は労災になりません。

ただし、社員食堂で食事中に屋根が崩れてきて怪我をしたというような場合は、会社の設備に不備があり、事業主の責任が問われますので労災が適用されます。

また、仕事中だったとはいえ、以下のような場合は労災扱いにはなりません。

 ・障害物が何もない廊下を歩いていて、足がもつれて転倒し負傷した。

 ・紙で指を切ったので絆創膏を貼った。病院へは行かなかった。

 ・「けんか」をして殴られ負傷した。

なお、けんかの場合は「第三者行為災害」といって健康保険証も使えません。

 

こんなこともあります・・・

もともと持病の「腰痛」があるような場合、仕事だけが原因とはいえず、労災認定されない場合があります。

仕事中に落ちたとか、あるいは重いものを持ったとか、腰に衝撃を受ける出来事があったり、明確に突発的事故が発生し、それがきっかけで発症したと思われる急性の場合以外は認定されにくいです。

特に「ぎっくり腰」は原因が日常生活の動作から生じるものとされており、例えば床に落ちたものを拾うという動作でもぎっくり腰になるので、仕事中ではあるが、業務が原因とはいえずなかなか労災として認められるものではありません。

 

もし業務中に負傷したら、病院へいきますが・・・

【1】 健康保険証は提示せず、「労災扱いでお願いします。」と伝えます。

 ※労災の治療に健康保険証は使用できません。

 

【2】 病院は治療費を労働基準監督署へ請求します。

 そのための書類は会社が作成しますので本人の印鑑を押して病院へ提出します。

 

【3】 仕事を休まなければならない場合は、休業補償の書類を会社が作成しますので、本人の印鑑を押して、医師に労務不能証明を書いてもらい労働基準監督署へ提出します。

 監督署から直接本人の口座に振込みがあります。このお金は非課税です。

 

 

以下の表は労災補償についての簡単な説明です。

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 いずれも治癒するまで補償があり、もし治療の途中で退職しても補償は継続されます。

不幸にして障害が残った場合、年金などが支給されます。

また、亡くなった場合は、遺族への一時金や年金など手厚い補償があります。

また、労働者が業務災害で休業している期間と復帰してから1ケ月以内は、事業主は解雇できないことになっています。(ただし本人の意思による退職や契約期間満了の終了は問題ありません。)

 

 

次回は「通勤災害」についてみてみましょう。お楽しみに!

アビリティーセンターで「社会保険」や「法務」に携わる経験を活かし、働く人には知っていてほしい話をわかりやすくお伝えしていきます。