2015年12月9日
社会保険の適用拡大まで10ケ月をきった?!~平成28年10月から実施されます~
従業員501人以上の事業所に勤務している方が適用対象になります。
以下の3つの要件すべてを満たすパート従業員さんは、社会保険に加入しなければなりません。
① 1週間の所定労働時間が20時間以上
② 月額賃金88,000円以上(年収106万円以上/残業代や交通費などは含まない)
③ 継続して1年以上雇用されることが見込まれること
※平成31年以降は従業員500人以下の事業所も適用予定です。
現在の社会保険の加入要件は「週30時間以上かつ2ケ月以上の雇用見込み」ですから、ずいぶん基準が下がりますね。
結婚している女性の場合、夫の健康保険の扶養家族でいるためには、「年収130万円未満」という枠を守っていれば、健康保険や年金保険料を負担しなくてよかったのですが、上記の要件を満たせば、妻も自身の社会保険に加入するわけですから、いわゆる「扶養範囲内で働く」意味はなくなります。
扶養範囲内で働いている人は来年10月からどうなる?
では例を上げてみてみましょう。
どうせ保険に加入するなら、もう少し長い時間働かないと手取り額が減ってしまいます。
ですが、時間を増やすといっても、会社側も同額の保険料を負担するので、経費が増えます。
どんな働き方をしてもらうか、今以上の成果を上げてもらうか、を考えるはずです。
仕事内容を見直したり、効率化を考え、人員削減や配置換えという可能性も有り得ます。
「働く人」も「会社」も変化に対応していかないといけないですね。
なお、要件③の「1年以上の雇用見込み」についてですが、有期雇用契約で3ケ月ごと、6ケ月ごとに契約更新していて、「契約の更新がありえる」という場合は、加入対象となります。
「契約終了」が確定している以外は対象となります。
社会保険に加入することのメリットは?
傷病手当金
病気や怪我で4日以上休んだ場合、約7割賃金が健康保険から支給されます。1つの病気に対して1年6ケ月まで支給されます。健康保険の加入期間が1年以上あれば、退職しても支給されます。(非課税)
出産手当金
出産のため産前産後(98日間)を休業した場合、健康保険から約70%賃金が支給されます。健康保険の加入期間が1年以上あれば、産前産後期間中に退職したとしても支給されます。(非課税)
厚生年金
国民年金に上乗せされるので65歳からの年金額が増えます。
国民年金額は78万円(月額65,000円)ですから、これだけでは生活できませんよね。
ですから厚生年金が加算されれば助かります。
また、事故や病気で障がい者になった場合、障害基礎年金にプラスして障害厚生年金も支給されます。いざという時には加入しておいて良かった、といえるものです。
社会保険の適用拡大は、保険料を納める人を増やし、財源を確保するためです。
平成26年の女性雇用者数は2,400万人で、雇用者総数に占める女性の割合は43%となっています。
女性の「正規職員」は25歳~29歳がピークで、35歳~39歳を底に再び上昇するが、パート・アルバイトの非正規雇用が主となっています。
今回の適用拡大は、この層にいる多くの主婦などから社会保険料を徴収するということです。
そのための「保険大改革」です。
が、日本は少子高齢化で労働人口が減っていますから、女性やシニアにもっと働いてもらうための「条件整備」がすすんでいます。
いつくかご紹介します。
65歳以上の人も雇用保険に新規加入できる
現在は65歳以降に雇い入れられた人は、雇用保険には加入できません。
ですが、今後は65歳以上の人も新規加入できると、その後の「失業手当」や家族の介護で休む場合の「介護休業給付金」などが支給されるようになります。
「高年齢者雇用開発特別奨励金」支給
65歳以上の人を雇い入れた企業に対して「高年齢者雇用開発特別奨励金」が支給されます。
中小企業で1名につき最大60万円、大企業では50万円だそうです。
「介護休業給付金」引き上げ
現在の「介護休業給付金」は賃金の40%ですが、来年度中には「育児休業給付金」と同様に67%に引き上げられるようです。
介護のための離職者を減らすために手厚くするのですね。
マタハラによる退職は給付制限期間なし
マタハラ(マタニティーハラスメント 妊娠や出産を理由に退職に追い込まれる、育児休業を拒否されるなど)により退職した場合、今までは「自己都合による離職」という扱いでしたが、今後は、倒産や解雇など事業主の都合で辞めた場合と同じ扱いとなり、90日間の給付制限期間がなく、すぐに失業手当がもらえて、受給期間も長くなるようです。
「育児休業」の要件緩和
非正規労働者(有期雇用など)でも育児休業をとりやすくするための動きもでてきています。
現在の要件では、「1年以上雇用されていること」「子が1歳以降も雇用継続の見込みがあること」となっていますが、それを緩和するというもので、妊娠出産で女性が職場を離れないようにして、一定期間休んでまた復帰することを奨励しているのです。
会社側は育児休業期間中は給与を支払う義務はなく、保険料も免除されているので負担はありませんが、復帰後の配置が課題になるので、育児休業の取得を拒むケースが多いようです。
が、要件が緩和されると育児休業がとりやすくなります。
育児休業給付金についても、平成26年4月から支給額が賃金の50%から67%に引き上げられました。
支給期間約10ケ月間のうち最初の6ケ月間は67%、その後の4ケ月間は50%、これはずいぶん手厚い改正となりました。
とにかく今後、日本は働く人を増やさないといけません。
外国人労働者も増加するでしょうし、その反面、人工知能などの開発により単純作業などは機械にとって替わられることでしょう。
いずれにしても、女性も男性もシニアも障害者もみんなで働いて、税金や保険料を納めることで、社会を支えていかないといけません。
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