労災保険ってどんなもの?【2】「通勤災害」

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前回の、労災保険と「業務災害」のお話の続き。

今回は「通勤災害」についてお話します。

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「通勤災害」とは?

業務のために自宅と就業場所との往復を合理的な経路、方法で移動している途中で被災し、負傷・病気になることです。

 

「通勤災害」を経験したことがある、という方はおられるかもしれません。

一番多いパターンは交通事故ですが、双方または片方が車(バイク)の場合は「自動車保険」が優先し、原則、労災適用しません。

 

労災の補償は「労働者自身(身体)に関するもの」だけですから、交通事故による車の修理代や相手の怪我への補償はありません。必ず警察を呼んで事故処理をしておきましょう。

 

ですから通勤災害として該当するものは「自損事故」または「相手が不明」という場合になります。例えば、

自転車で走行中、飛び出してきた猫をよけて電柱にぶつかり怪我をした。

歩行中、排水溝の穴につまずいて転倒し怪我をした。

交差点を歩行中、左折してきた車と接触し打撲したが、相手は走り去って不明。

というような場合です。

 

ここで疑問?会社をでて真っ直ぐ自宅へ帰る、そんな人ばっかりじゃないでしょ。

そうなんです。途中で寄り道したらどうなるの? 

例えば、帰宅途中に病院へ寄る、子どもを保育園に迎えに行く、出勤前に介護している親の家に寄る、なんてことがありますよね。

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この図の「生活に必要な行為による中断」とは、意外と広い範囲で認められています。

スーパーに寄って日用品の買い物をする、クリーニング店に寄る

理髪店へ寄る

独身者が夕食を食べるために飲食店に寄る

公園のベンチで短時間休憩する

電車の運行待ちのため、書店へ寄る

選挙の不在者投票をするため市役所へ寄る

などがあります。

上記のことをしている間は「中断」となりますが、その後、また通勤経路に戻った所からの災害には通勤災害が適用されます。

 

その他にも、通勤災害として認定されるもの

昼休みに昼食を取るために自宅へ戻り、食事を終えて会社に戻る途中の事故により負傷した。

マイカ-通勤者が通勤経路上にあるガソリンスタンドに給油のために立ち寄った際にドアに指を挟んで負傷した

電車通勤している労働者が会社から退勤して自宅へ向かう際、最寄りのA駅ではなく、会社からA駅までの距離よりも遠いB駅まで徒歩で向かう途中、道路上で転んで被災した

共働きのマイカ-通勤者が、同一方向にある妻の勤務先を経由して自らの勤務先へ向かう途中の事故により被災した

 

なお「逸脱」とは、映画やカラオケに行く、友人と酒を飲みに行く、というようなことですから労災が適用されません。

また、買い物していた店内で負傷した場合は通勤災害とはならず、スーパー側の「安全管理義務」「施設賠償」などにかかわる事項となります。

 

また、次の場合は労災認定されない事例です。

自宅敷地内にある車庫の中で転倒して被災した

社内の会議室で研修会が開催された後に、会社近くの料理店での懇親会に出席した帰りに被災した

マイカ-通勤者が前日泊まった婚約者宅から出勤する途中で被災した

マイカー通勤者が路面凍結といった事態を予測して、通常の出勤時刻とかけ離れた時刻に出勤する途中での交通事故での負傷

 

その他にも・・・

原則、地震、台風など天災地変は該当しませんが、地下鉄サリン事件で被災した人達には通勤災害が適用されましたので、場合によって労働基準監督署が判断します。

「出張」で自宅から駅へ行く途中の事故は「通勤災害」ではなく「業務災害」となります。

単身赴任者の帰省先住所と住居間の移動も「通勤災害」として認められます。

特例として、緊急用務のため会社から呼び出されて出勤していた場合の事故は、通勤災害ではなく「業務労災」として扱われます。

以上のようにかなりの範囲で労働者は守られています。

 

ですが、安全ルールや規律を守り、痛い思いをしないよう、会社や仲間に迷惑をかけないようにしたいものです。

アビリティーセンターで「社会保険」や「法務」に携わる経験を活かし、働く人には知っていてほしい話をわかりやすくお伝えしていきます。