【内子町】東京からチーズづくりでIターン・國分さんインタビュー(1/2)
2015年3月3日 byアビリティー・センター
松山インターから高速で約30分の距離にある内子町。
古い町並みを生かしたまちづくりと、
農作物の直売やグリーンツーリズムなどの第一次産業の活性化に力を入れており、
それらの取り組みで全国的にも有名な町です。
そんな内子町の中心部から車で約20分。
くねくねした山道を登ったところにあるのが、「チーズ工房醍醐」。
日本には有数の、新鮮なナチュラルチーズの製造にこだわった工房です。
今回ご紹介させていただくのは、
その工房を、内子の酪農家山田さんと一緒に運営している國分茂樹さん。
2011年に東京から愛媛に移住し、ナチュラルチーズづくりに人生をかける、熱い人です!
愛媛に来られる前にどんなお仕事をされていたか教えてください。
前の職場は某大手通信系の会社でした。
そこで、デザインや営業企画のようなことをしていました。
元々、「起業すること」に興味があったので、ずっと居るつもりはなかったんです。
社内にいるうちに、先端技術で起業をしようと思い、企画を立てたこともありました。でもそれは、日本でやるにはコストがかかりすぎることが分かったので、やめました。
チーズで起業をしようと思ったきっかけはありますか?
「起業したい」という気持ちは持ちながらも、まだそれが何なのかが分からないとき、たまたま行ったイタリア旅行で、ナチュラルチーズに出会いました。
日本に入って来ているものと、味がぜんぜん違う!
なんでだろう?と思って、自分なりにいろいろと調べてみました。
シンプルなことなのですが、まずは鮮度が違うんですね。
食材はすべてそうですが、空輸とかしたらダメなんですよ。
新鮮なものをその場で食べないと!
日本で食べられるチーズは、外国産か、北海道産のものが多いですよね。
日本人に馴染み深い鰹節のような日本人好みのチーズを作るには、乳の“旨味”がキモになります。
でも、北海道の牛乳は“旨味”があるというより“淡白”なんです。
そのまま飲む牛乳には向いていても、日本人好みの旨味のあるチーズにはあまり向かないのではと考えています。
旨味のあるチーズはヨーロッパのでも、南の方でつくられています。
技術的な問題ではなく、環境の問題なんです。
このチーズ業界の矛盾を、僕はチャンスだと思いました。
国産の日本人好みの旨味のあるナチュラルチーズを作れば、ビジネスになるかもしれない。
愛媛に来られた、きっかけは何だったのでしょうか?
チーズで起業をしたいと考えてから、「おいしいチーズが作れる場所はないか」と、いろんなところをリサーチしました。
岡山、九州、福島とか。
そのときに、愛媛も尋ねてみたんです。
役場の方に、僕のやりたいことを伝えると、
最初は「お前、何考えてんだ !?」って言われました。
「そんなに簡単じゃないけど、どうなんや?」とつっこまれて、
「チーズの市場はこれから変わってくる。売り上げはこういう風に上がって行くはずだから!」と僕なりに説明をしました。
すると「本当にうまく行くと思うのか?だめかもしれないけれど、やってみるかい?」と、紹介してくださったのが、酪農家の山田さんだったんです。
この山田さんとの出会いが、愛媛への移住の一番のきっかけです。
チーズづくりには、酪農がかかせません。
どんなにやる気があっても、受け皿がなければものごとは成立しない。
山田さんは、僕の受け皿になってくれました。
ちなみに、もともと僕は愛媛によい印象を持っていました。
前職のときに、何人か愛媛の方と仕事を一緒にすることがありまして。
愛媛の人って、どんなえらい人にも本音をぶつけてしまうという印象があったんです。
裏表がないんですね。
それでも憎まれないのは、人間性なのかな。
僕なんてすぐ敵をつくっちゃうから羨ましい。
こっちに来てからもその印象は変わっていません。
会う人会う人、本音をちゃんと持っています。
ほわっとしている人も、実は頑固だったり、芯が強かったり。
そこがおもしろいです。
あと、松山にはイタリアン系のお店が多いのもポイントでした。
イタリアンは、フレンチのような創作系ではなく、「シンプルザベスト」の世界だから。
イタリアンの店が多いってことは、“素材命”でやっているお店が多いってこと。
うちも素材命でやっているので、マッチングしやすいと思いました。
山田さんがキーマンだったんですね。
山田さんは、20年前から放牧スタイルで酪農をしている方。
今でこそ、放牧スタイルが注目されていますが、当時はあまり知られていませんでした。
山田さんには先見の明があったんでしょうね。
ここの牛は、人を警戒しない。そしてとても健康的。
のんびり草を食べて、運動して、時間になると搾乳されに降りてくる。
足がとってもしっかりしているでしょう?
東京ドーム1個分ぐらいの大きさがあるこの牧場を上り下りしているから、鍛えられているんです。
引き締まって小柄ですが、乳量は変わらないですよ。
北海道でチーズをつくっている先輩がここに来たときに、
「ここはすごいな!ヨーロッパの山のチーズの場所だよ。
こういうところでチーズをつくりたいな、僕も」と言っていました。
チーズをつくる上で、「乳質を落とさない」のは大きなポイント。
乳を運ぶ際の微動な振動でも、質を変えてしまうので、牧場と工房はできるだけ近い方がいい。
だから、牧場から30mしか離れていない場所に工房をつくりました。
すべては山田さんの協力がないとできなかったこと。
感謝という言葉では言い表せないぐらい、山田さんには想いがあります。
第二回目へつづく
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